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『スイス・ヴィジョン - 新世代の表現手法』の展覧会企画と会場デザインを担当しました。

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こんにちは、空間デザインコース助教の小山祐輔です。

 

この度、私が所属しているJSAA(日瑞建築文化協会)にて、スイスの4組の建築家による展覧会の企画と会場デザインを担当しましたので、その時のお話をします。

 

※JSAA(日瑞建築文化協会):スイスでの就業や留学経験のある日本人建築家によって組織されるプラットフォーム。両国の建築分野での交流と相互理解を深めるために活動しています。

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会場の様子 ©JSAA

 

本展は、「建築家による映像作品展」という少しユニークな企画となっています。

建築デザイン分野において、よく使われるツールとして図面やスケッチ、模型やイメージパースが挙げられますが、SNSやスマートフォンの普及によって、私たちの日常的な表現手段となった「映像」は、建築家にとっても、手軽な表現手法であり、新しいデザイン探求手段のひとつとして積極的に活用されています。

 

そのような背景を踏まえ、本展では『新世代の表現手法』と題し、「映像」を主役とする展示を企画しました。

これには、化石燃料を消費して作品を輸送するのではなく、デジタル情報の転送とすることで、二酸化炭素排出を極力削減する次世代の展示方法を模索する側面もあります。

展示会場も同様の考え方から、再利用可能な家具を使いデザインしています。(本展協賛企業であるカリモク家具株式会社よりKNSシリーズ、USM U. シェアラー・ソンズ株式会社よりUSMハラーシステムを支給)

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会場の様子 ©JSAA

 

ところで、スイスと聞いて、みなさんはどのようなイメージを浮かべるでしょうか。

チョコレートやチーズといった食品、時計や家具のような精巧なプロダクト、アルプスの少女ハイジのような牧歌的風景を想像する人もいるかもしれません。

実はスイスという国は、国土全土が日本の関東エリアと同等の広さで、その中に4種類の言語圏があります。トンネルを1つ超えると違う言語・違う食文化の人々が生活しています。この国は、地形も文化も言語もばらばらで、それぞれの個性が共存しているような国であると言えます。

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日本とスイスの国土面積の比較

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スイスの言語圏マップ
黄:ドイツ語圏/青:フランス語圏/赤:イタリア語圏/緑:ロマンシュ語圏

 

今回の企画展は、1980〜83年の間に生まれ、前述したように言語や文化の異なるスイス各地で建築教育を受け、現在活動している4組の建築家(BY JUNG  / Truwant + Rodet + / WALDRAP / Weyell Zipse)を選出しています。

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来日したWeyell Zipseの映像作品とプレゼンテーション(Christian Weyell(左)とKai Zipse(右)) ©JSAA

 

本展のために制作された各映像は、以下に見られるように各建築家の作家性が感じられる魅力的な作品でした。

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BY JUNGの映像作品
静止画のような映像の中で、時間の変化を感じさせるささやかなアニメーションが展開する作品

 

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Truwant + Rodet +の映像作品
静止画と動画がコラージュされることで、建築家の脳内や、事務所の机の上で起きていることを追体験するような作品

 

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WALDRAPの映像作品
実存する使われてないスペース(この写真では貯水池)の航空写真に対して、海水浴客などの映像をコラージュすることで、その場所に秘められた空間的可能性を示唆させる作品

 

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Weyell Zipseの映像作品
1/10スケールで制作された巨大な模型を撮った写真をズームやパンといった動きをつけて映像化。スーパーの紙袋やコーヒーマシンといったものまで細かく作られ、その建築空間で繰り広げられるであろう物語が展開する。

 

会場となったアクシスギャラリー(六本木)の特性を活かし、フルハイトで映像を投影しました。等身大の映像と共に、空間体験にとって重要となる音が流れ、図面や写真と共に展示しました。

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USMハラーユニットの上に1.5m角の正方形パネルを展示。

 

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Weyell Zipseのパネル。建築写真のポストカードが置かれ、来場者は自由に持って帰ることができる。



また会期中はギャラリーツアー(来場者に向けて展示に関する説明などを行うツアー)を実施し、私が担当した回には本学部の学生も20名ほど参加しました。

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ギャラリーツアーの様子

建築文化先進国のひとつであるスイスで活動する建築家たちの関心や、表現のクオリティは学生にとっても良い刺激になったようでした。

当日参加した学生たちからは、「映像を使った空間デザインの表現は、とてもインパクトがあり驚いた。自分の制作活動でも積極的に使ってみたい。」等などの感想が寄せられました。

私自身、そして参加した学生にとっても、「提案するデザインをどのように表現し、人々に届けるか」ということについて深く考える貴重な機会となりました。

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会場の様子

 

Swiss Visions - A New Generation of Architectural Expressions

『スイス・ヴィジョン ─ 新世代の表現手法』

展示公式リンク
https://js-aa.org/event004.html

Japan Architectによる展示取材記事
https://www.japan-architects.com/ja/architecture-news/zhan-lan-hui/swiss-visions

アーキテクチャーフォト®による展示紹介記事
https://architecturephoto.net/205567/

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(C)2012 Tokyo University of Technology, School of Design.