コペンハーゲンでの国際学会「HCII2023」参加と都市交通のエスノグラフィ調査
工業ものづくりデザインコース講師の相野谷威雄です。
今回は、デンマークの首都コペンハーゲンでの学会参加と、その際に実施したモビリティデザインのためのエスノグラフィ調査についてお話しします。(エスノグラフィの意味については後述します。)
学会会場となったAC Hotel Bella Sky Copenhagen
学会は、最先端の研究や国際的な学術交流が盛んに行われる場です。
今回の「HCII2023」は、人とコンピュータの関わり合いや相互作用に関する国際学会ですが、次世代の自動車デザインに関する発表や討議も、自動運転や人間の認知機能などのテーマも含めながら行われています。
学会には、昨年度本学大学院を修了し、自動車関連企業に就職した小川拓海さんと共に参加しました。
私たちが発表した共同研究テーマは、「Study of HMI in Automotive〜 Car Design Proposal with Usage by the Elderly〜 」と題し、都市問題と高齢者のためのモビリティに関する最新の研究についてです。具体的には、高齢者用の自動車デザインにおいて問題となる乗り降りの問題を中心に、ドア形状を調査するための手法研究や、自動運転になった場合の操作性に関する研究などを発表しました。
発表後は、自動運転の自動車を作られている方や研究者など、様々な国の参加者から研究アプローチに関する共感と今後の展開に関するアドバイス等をいただき、新しい知識や視点を得ることができました。
世界中の国々や都市を訪れると、普段私たちが生活している環境との違いが発見できます。
せっかくコペンハーゲンに来たからには調査を!ということで、学会参加の傍ら、私たちは街に繰り出し、エスノグラフィ調査を行いました。
この調査方法は、人々の日常の様子や文化を深く観察・記録する手法で、都市や交通の背後にある「人々の生活」を深堀りします。
今回の調査ポイントとして、
・それぞれの交通手段が選択される背景について
・市民の日常はどのような移動ルーチンになっているか
・公共空間はどのように活用されているか
・モビリティに関連する文化や価値観にどのような特徴が見受けられるか
を中心に進めました。
自転車用の道路も街中に整備
水辺の街として水路も発達しており水上バスも運行している
学会参加とエスノグラフィー調査を通じて、コペンハーゲンの都市とモビリティの奥深さを感じる「都市の未来を探る旅」となりました。自動運転による移動手段が増え、移動の価値も変わってきます。これまで移動が不自由だった人も気軽にできるようになります。移動中も様々なことが同時にできるようになり、新たなライフスタイルが生まれるかもしれません。これらを実現できるように考えるのがデザインだと思います。
これからも、実地調査と学術的なアプローチを組み合わせて、よりよい都市の未来を創るためのデザイン研究を続けていきたいと思います。
◯参加申し込み受付中(10月28日開催)
東京工科大学デザイン学部&日本工学院専門学校デザインカレッジ公開講座
「次世代のモビリティデザイン教育の可能性を考える」
https://www.teu.ac.jp/press/2023.html?id=193
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