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2022年2月

デザイン学部卒業制作オンライン展示開催中

東京工科大学デザイン学部では、オンラインによる卒業制作展を2月28日まで開催中です。2月14日には優秀賞、奨励賞の受賞者が発表となりました。

学部設置から12年目を迎える今年度も、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を考慮し、オンライン形式による展覧会の実施となりました。この状況下でありながらも「人の営みを快適にする」「デザイン表現で問題を解決する」ことを大きなテーマに、「視覚デザイン」と「工業デザイン」の各コースから、グラフィックデザイン全般、Web、映像、プロダクトデザインや雑貨の提案、空間演出シミュレーションなど185点の研究作品をご覧いただくことが出来ます。

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【オンライン展示情報】
令和3年度 東京工科大学 デザイン学部 卒業制作オンライン展示
2022年2月1日(火)〜2月28日(月)
https://tutsotsuten.com/

 

また、受賞者のうち3名がJ:COMのインタビュー取材を受け、インタビューの様子が「ジモト応援!つながるNews」で順次放送されています。
■放送予定
J:COM「ジモト応援!つながるNews」2月24日
※放送日は変更になる場合があります

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工業ものづくりデザインコースの実学スキル紹介3 <カルラントレンドブック>

東京工科大学デザイン学部では、学部として「カルラントレンドブック」を導入し活用しています。カルラントレンドブックには、フランスに本社があるカルラン社によるデザインに関するリサーチがまとめられています。

カルラントレンドブック

ファッション業界では、「インターカラー」と呼ばれる世界流行色協会が事前に流行色を決めるという活動をしています。デザインの分野では、このカルランのようなデザインリサーチ会社が複数あり、それぞれの方法でデザインに関する予測をしています。このリサーチは流行するデザインを予想するということではなく、時代の流れや社会背景を分析し、一般の生活者が今後どのような意識や感覚を持つか、などを多角的に分析し、1年半〜2年半先のライフスタイル(生活様式)を提案するものです。

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カルラン冊子

カルラン社の今回のリサーチでは、コロナ禍において人々の生活が変化したことによる感覚や価値観の違いに注目し、色だけでなく、素材やデザインの与える価値などにも注目しており、さらには日本の企業における地方移転についても言及していました。

大学でこのようなリサーチを活用する方法としては、前回紹介したCMF分野においてリサーチを意識し提案するブランド・イメージなどの共有ツールとして利用することです。

カルラン社のこのトレンドブックには、素材感を共有するための素材見本も添付されており、デザインの先行事例とそのコンセプトを理解することができます。

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カルラン冊子の素材サンプル

世界的なトレンドを理解した上で、自分たちが想定するブランドへの応用、あるいは新しい提案を行うことができるということです。

このコロナ禍で、予定していた海外のデザインに関する展示会視察や学会などがすべてキャンセルになってしまいました。(オンライン開催ということで規模縮小で行ったこともありましたが)やはりデザインの分野では、空間にどのように置かれて、どのような価値が生まれるか、その素材感や、香り・音など五感で感じる部分が多くあると思います。そのような中で、このようなトレンドブックのデザインリサーチを活用することは特に大きな価値を持っていると思います。ぜひ東京工科大学、デザイン学部でこのようなリサーチなどを行い、実学的なデザインを一緒に学びましょう。

(工業ものづくりコース  相野谷威雄)

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工業ものづくりデザインコースの実学スキル紹介2 <CMFデザイン(カラー、マテリアル、フィニッシング)>

近年、工業デザインの分野で注目されている言葉としてCMFがあります。CMFとはカラー、マテリアル、フィニッシングの頭文字で、製品の多色展開としてのカラーバリエーションだけでなく、質感や触り心地というような要素もデザインの対象とする考え方です。
このCMFは、多くの素材に関する知識やサンプルなどを活用し、形状などがデザインされた後(工程としては後ろの方)に展開されることが多くありました。

近年のデジタルを活用したデザインプロセスでは、レンダラーと呼ばれる精細な素材設定ができるCGアプリケーションの登場により、このCMFをより簡単に行うことが可能になりました。

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カラーバリエーション検討(学生作品)

買い物などをしている人に注目していると、商品を手で触って質感を確認している姿を多く見かけます。また、WEBショッピングなどでは画面上だと素材感がわからないということが問題の一つとしてあります。このように、意識していないとしてもプロダクトのCMFは重要視されていることが理解できると思います。

大学における課題制作におけるCMFは、制作するイメージの初期段階で意識するようにしています。素材感がデザインの形状にも大きな影響を与えると同時に、製品のコンセプトを表現することにも活用できるためです。今までは硬いプラスティックや金属で作られていたものも、技術革新によってソフトタッチの加工が可能になりました。

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3Dプリンター使用によるデザインプロセス(学生作品)

革のような素材感もプラステックで実現できますし、金属であってもエイジング加工のような、使われてきたような質感再現、塗装や光による演出効果など、いろいろな表現ができるようになってきました。

CMFを考える中で、そのデザインを制作するための製造方法も検討しなければなりません。それは、使用する素材によっても、作り方、アッセンブル方法、コストなども大きく変わるためです。ここでは知識として持っている製造方法から、自分のイメージするデザインを実現するためのアイデアとしての製造方法を検討する必要があります。このような部分がCMFを検討しながら、デザインを実学的に考えるポイントになると考えています。

多くの市場にある先行事例としての商品をリサーチし、自分のイメージする素材感の製造方法を調査することも必要になりますし、場合によっては新たな研究テーマとして展開できる可能性も持っています。工業デザインは、今まではカッコイイというキーワードが重要であった部分もありますが、CMFでは、より繊細な感性の部分のデザインが重要になります。
色や素材感、製造方法も含めて実学的なデザインを学びましょう。

(工業ものづくりコース 相野谷威雄)

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工業ものづくりデザインコースの実学スキル紹介1 <クレイモデリング >

実学に基づいている本学では、ビジネスの現場でも使われているオンライン会議システムや情報共有ツールなどを授業で活用し演習を行っています。そのため大学のキャンパス内だけでなく自宅やデザイン調査などの現場から授業に参加することも可能となりました。


しかし、デザインを進めていく中では、大学でしか作業できないことも存在します。その一つがクレイモデリングです。クレイモデリングは、熱すると柔らかくなる特殊な粘土(クレイ)を使います。クレイオーブンと呼ばれる粘土を温める専用の機械を使い、温めた粘土を想定する形状に粗く盛り付けて、室温で固まった状態から削って造形します。ここが普通の粘土との違いになり、「盛る」ではなく「削り」ながら造形することが特徴です。

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このクレイを削るための道具もいろいろあります。掘り出すような道具から、固まって硬くなったクレイをカンナで削るように、クレイの表面の数ミリにも満たない部分を削るプレートなど、道具の特性を利用して造形していきます。まさに、この作業が彫刻のように作品を作る瞬間になります。
実際の自動車デザインの現場では、デザイナーのアイデアをカタチにするクレイモデラーと呼ばれる職人的な技術を持つメンバーがおり、デザイナーとクレイモデラーとの共創で制作していきます。彫刻家のような仕事を分業し、絵で表現する、図面的に検討する、CADなどのデジタルデータも活用する、などというプロセスを経て原寸大のクレイモデリングを制作します。このプロセスのカタチをイメージする時に、デザイナー自身がスケッチだけでなく、クレイモデリングを行うこともあります。今回の授業ではこの部分を授業内で実践しています。

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実際の現場と同じように、学生がクレイモデリング後にデジタルデータに展開したり、スケッチで再検討したりとデザイナーの思考に合わせて様々なデザインツールを使って制作をします。学生は自身の手を使って削って、そこからアイデアが展開される実学的な体験をしています。

(工業ものづくりコース 相野谷威雄)

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