デザインの多様な力―「駄菓子の3Dモデリングアーカイブの構築と研究」
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みなさんは、デザインにはどんな役割があると考えていますか?
今回は、本学デザイン研究科(大学院)の学生が学会で優秀賞を受賞した研究を通じて、こんな役割もあるのだ、こんな研究もあるのだという事をお伝えしたいと思います。
2021年10月8日(金)にオンライン開催されたアジアデジタルアートアンドデザイン学会(ADADA)主催のADADA Japan 2021 学術大会において、デザイン研究科(大学院修士課程)1年の楊 麗捷(よう りけつ)さんが優秀発表賞を受賞しました。Work in Progress部門で、楊さんは「駄菓子の3Dモデリングアーカイブの構築と研究」というタイトルで発表をしました。
みなさんは駄菓子をご存知ですか?
コンビニもない時代、子供でも日常的におこづかいで買える安価な菓子で、昭和の時代にはそれぞれの町にそうしたお菓子を売る駄菓子屋があったのです。当時は駄菓子屋を中心に子供達のコミュニティが形成されていました。
楊さんの研究では、現在国内で販売されている「駄菓子」のパッケージを3Dスキャンし、3DCGモデリングデータ化して閲覧できるシステムの構築を行なっております。先日の発表では、主にツール別の3Dスキャンの精度と速さなどの技術面を検証してきた内容について進捗報告をしました。
楊さんはこのシステムによって、「駄菓子」を通じて高齢者と若者・子供という異なる世代間でのコミュニケーションが活性化するきっかけをもたらしたいと考えています。例えば、高齢者が話す「昔はこんな駄菓子があった、味はどうだったか、駄菓子がどんな存在だったか」というエピソードは、駄菓子が生活の中には身近にない現代の若者や子供達に、暮らしの違いや時代による文化の違いへの興味を起こさせるかもしれません。
発表を聞いた学会の参加者からは、「特定の駄菓子をシリーズでアーカイブしたら」「過去の駄菓子を3DCGモデルにするのはどうか」などポジティブなアドバイスが寄せられました。
今回は、大学院生の発表を通じてデザインの持つ可能性は多様で、見た目のきれいさだけではなく、このようにコミュニケーションの活性化という機能や役割を果たす可能性もあるデザインの事例を紹介しました。
みなさんも先入観にとらわれずにデザインを捉えてみましょう。(デザイン学部 松村 誠一郎)