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基礎教育科目「美術と文化」 ―対面授業で屏風と対面、屏風だってデザインコンテンツだ!

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デザイン学部では、基本的なデジタルスキルから先端的な専門デザインスキルへと段階を追って身につけるカリキュラムとなっていますが、技術だけでは良いデザインの発想は生まれません。1~2年生の講義系科目や基礎教育科目(いわゆる一般教養科目)で、発想の基盤となる知識や考え方を学びます。

ここで紹介する基礎教育科目「美術と文化」という授業では、美術・工芸を「作品」としてではなく、暮らしの中で使われてきたもモノとして、それらがどのようにして製作されるか、どのように使われてきたかについて説明しています。

例えば、対面授業では、江戸時代の屏風や大正時代の掛け軸に接してもらい、それらが、生活の場でどのように扱われていたかについて考えてもらいました。
PC画面や書籍のページ、教室のスクリーンでそれらの画像を見た場合、人はそれを「資料」的に認識してしまいがちですが、今回の授業では、実物の持つ力、リアルな体験を通じて、実体としての屏風・掛け軸に向き合うことで、改めて様々な発想が芽生えたようです。

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さて、屏風は、「美術作品」という観点からだけ見てしまうと、単なる横長の画面という事になってしまいます。画集や美術館では、真平に広げて凹凸のない状態で掲載・展示されていることが多いのですが、実際には、折り目の凹凸のある状態で立てて使用されます。

そして何よりも、
機能的には、単なる「画面」ではなく、
1 空間を演出する、
2 空間を区切ったり遮蔽したりする間仕切り、
という役割を持ったインテリア製品なのです。
従って、描かれる絵も、そうした機能を前提としたうえで、テーマや描き方を選んで、実体としての屏風の立体的なジグザクの視覚効果を考えて描かれるのです。

つまりは、空間デザイン、視覚デザインの両方に関わるものなのです。現代の多くのご家庭では、屏風や掛け軸をかつてのように使う事はなかなか難しい、しかし、折りたためば数分の一の形状になる屏風や巻いてしまえば棒状になってしまう掛け軸は、工夫次第で生活の場を演出する道具になりえるでしょう。この形式に、映像やデジタルスキルを活用することも可能です。現代そして未来にあった形での活用をデザインすれば、単なる「文化財」としてではなく、時代に即応した生活デザインコンテンツとなりうるのです。
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 インターネットは世界を変えました。これからの社会はどんどん変革していくでしょう。さらに新たな技術や考えが革新を促進していくことは明らかです。いつまでも、現状維持では、守るべき良き伝統も淘汰されていってしまいます。文化の変革にどのように対応させていくかを考えていくこともまたデザインの力と言えるでしょう。
(デザイン学部 黒川 修一)

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(C)2012 Tokyo University of Technology, School of Design.