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2022年1月

関心はあるけど一歩踏み出せないでいる貴方へ

デザインに関心はあるけど、美術は苦手だという方がいらっしゃいますが、東京工科大学デザイン学部には実技試験はありません。それはデザインを学ぶにあたっては、卓越した画力が必須なものだとは考えていないからです。もちろん、手描きの描写力は制作にあたって役立つスキルのーつであり、デジタルスキルを用いるうえでも基礎になるものではありますが、デザインの制作にとって、より重要なことは、社会や生活の中にある問題を見つけて改善しようという意欲と発想、そしてそれを形にする力だと考えているからです。

造形や描画の基本は入学後に初歩からでも学べるカリキュラムになっています。積極的に学ぼうという意欲と基礎的な学修習慣をもって、世の中の様々な問題をデザインの力で解決しようという気持ちのある人をこそ歓迎しています。センスを磨き、すぐれた発想力を身につけることで、貴方のデザインを社会に提案してみませんか?
本学部では「デザイン」とは、世の中にあるさまざまな問題―もっとこうしたほうが良いと思うコトやモノを見出して、その解決策を案出し、試作し、実現可能な形で提案することと考え、卒業した後に社会に役立つ発想・提案ができる人材を育むために以下の内容を用意しています。

①初歩から学べるデザイン
本学部では入学してから1年次の感性演習「描く」「つくる」、「色彩学」で、1からしっかり学んで、制作に展開できるカリキュラムとなっています。

②優れた発想に展開する「感性」と制作に必要な「スキル」を修得
柔軟で斬新な発想につながる皆さんの「感性」を育む内容となっていますし、1年次からデザイン制作に必須なPCスキルが基礎から学べます。

③「視覚デザイン」「工業デザイン」の二つの専攻
2専攻で入学し、3年次から専攻内の二つのコース(視覚伝達コース・視覚情報コース、空間演出デザインコース・工業ものづくりデザインコース)のいずれかを選んでより専門的な内容を学びます。

④これからの社会の求めに応えるデザイン
演習では、常に社会と関連した課題を通じて、サステナブル(未来に抜けて持続が可能な)社会の生活に役立つ実践的なデザイン制作を学修します。

⑤大学で学んだ成果を社会で活かすための就職指導
学部には就職指導を専門とする教員がいて、就職活動に必要な事柄が学べるプログラムだけではなく、デザインの力で社会に貢献できるような職に就けるように、卒業制作指導の教員が、一人一人の学生と向き合って就職支援を行い、毎年90%以上の就職率となっています。
 (デザイン学部 黒川修一)

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視覚伝達デザインコースでビジュアルコミュニケーションを学ぶ

視覚デザイン専攻教員の末房です。視覚伝達デザインという分野で最も基礎となるキーワードの一つがビジュアルコミュニケーションです。

ビジュアルコミュニケーションとは何でしょうか。

ビジュアルとは、視覚的に訴えるものやことですから、絵や写真・動画や文字といった視覚的なイメージによって、メッセージを受け手に伝え働きかけるコミュニケーションと言えるでしょう。

今回は、2年次後期の視覚伝達デザインコース「専門演習Ⅰ」についてご紹介します。本学部では、基礎をしっかりと学修したうえで段階的に学修していくカリキュラムになっていますが、2年次のこの授業では、課題を通してより良いビジュアルコミュニケーションとはどのようなものかについて学びます。

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他の要素を思い切って削ぎ落としたフラットな緑色の色面が、伝えたいことを明解にして視覚的な効を奏している。


今年度の授業では、ポスターのデザインに取り組みました。ポスターというと印刷物という印象が強いかもしれません。
しかし、ポスターのビジュアルは、例えばウェブサイトのトップページに配置されてメインビジュアルとして、一瞬にして視る人をその世界観に誘う効果や、伝えるべきメッセージを的確に知らせる重要な役割を担ったものにもなります。従って、ポスターのデザインを制作することは、視覚伝達デザインの基本を学ぶ上で重要なのです。

今回は、「気候変動」という大きなテーマについて取り上げました。先ず、グループに分かれて、気候の変動によって現在どのような問題が起きているのかを調べ、社会に伝えるべきメッセージを絞り込み、私たちの生活の中で皆が自分の事として認識するためには、どのような内容にするべきかについて考え抜いたうえで、その結果をスクリーンに映像として投影するなどして発表(プレゼンテーション)しました。その後は、グループ内の各自が個人制作として、そのメッセージをどのような視覚的デザイン―ビジュアルとして表すかに取り組みました。

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私たちの身の回りには、視覚的に訴えるメディアが多くあります。
例えば、身近なものとしてはスマートフォンやパソコン、駅などの公共の空間に設置された大型のモニター映像、本やカードなどの印刷物も挙げられます。どれだけメディアが発達しても、視覚的に伝えるものは、結局は「絵や写真・動画」と「文字や言葉」などによって作られている、という基本は変わりません。その絵や写真と文字などをいかに視やすく構成し、メッセージを伝える効果のあるものにするか、というのが、視覚伝達デザインの分野の基礎といえるでしょう。
(デザイン学部 末房志野)

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「サンクスナース」プロジェクト 新シンボルマークが特集記事として掲載されました

こんにちは。視覚デザイン専攻教員の田邉雄一です。
2020年10月末に決定した「サンクスナース」プロジェクト 新シンボルマークについて、東京都看護協会発行の会報誌「看護とうきょう vol.133」に掲載されました。

「サンクスナース」プロジェクトとは
1993年に『サンクスナース "看護師さんへ、ありがとう"』活動はスタートしました。当時、医療者個人への直接のお礼を控える文化がではじめたことも相まって、患者・家族の方々からの「何とかお礼の言葉を伝えたい、看護師さんの役に立つことで、恩返しをしたい」との声におされて、「サンクスナース」の活動が始まりました。個人の思いをひとつに集めることによって社会化する、新しい試みでもありました。
 2020年の「看護師への感謝のメッセージ企画」を機に、シンボルマークを新しくいたしました。患者さんへの直接のケアや、デザインによる課題解決を通じてケアに貢献したいと考える若い人たちの今後につながるものであってほしい、という思いが込められた取り組みです。(「サンクスナース 」プロジェクトWEBサイトより一部転記)

掲載にあたり、最終審査対象作品の学生へのインタビュー取材を行いました。
家族が医療従事者であることや、蒲田キャンパスならではの医療保健学部の友人への聞き取りを行ったり、SNSを利用しての情報収集をしたりなど、シンボルマーク制作にあたり、学生それぞれの制作に様々なプロセスがありました。
医療保健学部からの参加学生にも取材しました。近い将来自身が就くであろう看護職への思いもあり、デザイン学部の学生とは違う視点で、未来への思いが伝わってきました。

シンボルマークのテーマである、「看護師への感謝」より、学生それぞれのテーマの捉え方や制作プロセスなど、提案されたシンボルマークの背景を聞くことができ、学生それぞれが「看護職への思い」を意識し、取り組んだことが伝わり、同席した私自身も改めて考えさせられました。
一つのロゴマークであっても、その形には様々な考え方や思いが込められています。高校生の皆さんの周りにあるロゴマークにはどんな思いが込められているのか調べてみるのもデザインの知識につながり、面白い発見があるかもしれません。

2022年1月現在、新型コロナウイルスの新たな変異株が確認され、感染者数も日々変化しております。引きつづき感染対策を怠らないよう、生活していきましょう。

関連記事:
本学学生が制作した「サンクスナース」プロジェクトシンボルマークが採用されました

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基礎教育科目「美術と文化」 ―対面授業で屏風と対面、屏風だってデザインコンテンツだ!

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デザイン学部では、基本的なデジタルスキルから先端的な専門デザインスキルへと段階を追って身につけるカリキュラムとなっていますが、技術だけでは良いデザインの発想は生まれません。1~2年生の講義系科目や基礎教育科目(いわゆる一般教養科目)で、発想の基盤となる知識や考え方を学びます。

ここで紹介する基礎教育科目「美術と文化」という授業では、美術・工芸を「作品」としてではなく、暮らしの中で使われてきたもモノとして、それらがどのようにして製作されるか、どのように使われてきたかについて説明しています。

例えば、対面授業では、江戸時代の屏風や大正時代の掛け軸に接してもらい、それらが、生活の場でどのように扱われていたかについて考えてもらいました。
PC画面や書籍のページ、教室のスクリーンでそれらの画像を見た場合、人はそれを「資料」的に認識してしまいがちですが、今回の授業では、実物の持つ力、リアルな体験を通じて、実体としての屏風・掛け軸に向き合うことで、改めて様々な発想が芽生えたようです。

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さて、屏風は、「美術作品」という観点からだけ見てしまうと、単なる横長の画面という事になってしまいます。画集や美術館では、真平に広げて凹凸のない状態で掲載・展示されていることが多いのですが、実際には、折り目の凹凸のある状態で立てて使用されます。

そして何よりも、
機能的には、単なる「画面」ではなく、
1 空間を演出する、
2 空間を区切ったり遮蔽したりする間仕切り、
という役割を持ったインテリア製品なのです。
従って、描かれる絵も、そうした機能を前提としたうえで、テーマや描き方を選んで、実体としての屏風の立体的なジグザクの視覚効果を考えて描かれるのです。

つまりは、空間デザイン、視覚デザインの両方に関わるものなのです。現代の多くのご家庭では、屏風や掛け軸をかつてのように使う事はなかなか難しい、しかし、折りたためば数分の一の形状になる屏風や巻いてしまえば棒状になってしまう掛け軸は、工夫次第で生活の場を演出する道具になりえるでしょう。この形式に、映像やデジタルスキルを活用することも可能です。現代そして未来にあった形での活用をデザインすれば、単なる「文化財」としてではなく、時代に即応した生活デザインコンテンツとなりうるのです。
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 インターネットは世界を変えました。これからの社会はどんどん変革していくでしょう。さらに新たな技術や考えが革新を促進していくことは明らかです。いつまでも、現状維持では、守るべき良き伝統も淘汰されていってしまいます。文化の変革にどのように対応させていくかを考えていくこともまたデザインの力と言えるでしょう。
(デザイン学部 黒川 修一)

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デザインの多様な力―「駄菓子の3Dモデリングアーカイブの構築と研究」

みなさんは、デザインにはどんな役割があると考えていますか?
 今回は、本学デザイン研究科(大学院)の学生が学会で優秀賞を受賞した研究を通じて、こんな役割もあるのだ、こんな研究もあるのだという事をお伝えしたいと思います。

2021年10月8日(金)にオンライン開催されたアジアデジタルアートアンドデザイン学会(ADADA)主催のADADA Japan 2021 学術大会において、デザイン研究科(大学院修士課程)1年の楊 麗捷(よう りけつ)さんが優秀発表賞を受賞しました。Work in Progress部門で、楊さんは「駄菓子の3Dモデリングアーカイブの構築と研究」というタイトルで発表をしました。
みなさんは駄菓子をご存知ですか?
コンビニもない時代、子供でも日常的におこづかいで買える安価な菓子で、昭和の時代にはそれぞれの町にそうしたお菓子を売る駄菓子屋があったのです。当時は駄菓子屋を中心に子供達のコミュニティが形成されていました。
楊さんの研究では、現在国内で販売されている「駄菓子」のパッケージを3Dスキャンし、3DCGモデリングデータ化して閲覧できるシステムの構築を行なっております。先日の発表では、主にツール別の3Dスキャンの精度と速さなどの技術面を検証してきた内容について進捗報告をしました。
楊さんはこのシステムによって、「駄菓子」を通じて高齢者と若者・子供という異なる世代間でのコミュニケーションが活性化するきっかけをもたらしたいと考えています。例えば、高齢者が話す「昔はこんな駄菓子があった、味はどうだったか、駄菓子がどんな存在だったか」というエピソードは、駄菓子が生活の中には身近にない現代の若者や子供達に、暮らしの違いや時代による文化の違いへの興味を起こさせるかもしれません。
発表を聞いた学会の参加者からは、「特定の駄菓子をシリーズでアーカイブしたら」「過去の駄菓子を3DCGモデルにするのはどうか」などポジティブなアドバイスが寄せられました。

今回は、大学院生の発表を通じてデザインの持つ可能性は多様で、見た目のきれいさだけではなく、このようにコミュニケーションの活性化という機能や役割を果たす可能性もあるデザインの事例を紹介しました。
みなさんも先入観にとらわれずにデザインを捉えてみましょう。イン学部 松村 誠一郎

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